GTMの体系化 – その2 なぜ日本のSaaS GTMが大事なのか??
ぼんやり浮かんだ頭の中に描いた事を徐々に形にしていくために…
写真はロンドン出張のお土産探しの一枚。ロンドンの時はLibertyに行って、子供の服を中心に買っていくのが毎度の出張の合間の楽しみ。結果的に父親より子供の方が高くてオシャレなものを着る事になる(汗)
・あくまでも今は雑記なため、頭で描いたものをザザザっと記載
・自分の経験はフリーミアムなPLGからSLGへの成長が主な経験のため、Pure B2Bとは差異がある可能性あり
・日本のSaaS GTMに初めて触れる人達向けを想定(特に外資系での日本参入)
・(無いとは思いますが…)無断での転載、複製、改変等は禁止です
1)なぜ日本のSaaS GTMが大事なのか??
なぜなら日本の売上が一つの大きな柱になる可能性の高い国だからに尽きる。それぞれの本国のARR成長から始まり、周辺各国へ進出していく中で、アジアに日本がある。非英語圏でのコミュニケーション、パートナーカルチャー、製品細部までの改善要望、ローカル製品との競合、ローカリゼーション… 乗り越えなければならない山はたくさんあるものの、GDPは世界4位、十分なマーケット規模がある。2位の中国はカントリーリスクの高さから、5位のインドはマーケットの難しさから、おそらく躊躇う企業はたくさんあると思う。そうなるとアメリカからカナダ・メキシコ更にブラジルへ…と地域でのGTMを拡げていき、アイルランドから(税制上の理由で)ドイツ・イギリス・フランスへ…と地域でのGTMを拡げていき、残るはアジア含めた日本。エンタープライズ製品であれば、トヨタ、日立、NTTグループ、パナソニック…と大きな組織に1億、3億、5億円…と大きく育てていきたい本社の気持ちは自然な流れである。
英語圏のアジア諸国で先にGTMを進めた上で、日本に取り組むケースもある。まずは統括拠点としてシンガポールやオーストラリアでアジアでの売上のベースをつくり、そこから日本に取り組んでいく。アジアの中で日本からGTMを始めるのは、逆に言うと1)アジアの優先順位の高いどの国より突出してARRのベースがあり(orその後もアジアの中で急成長していく可能性が高く)、2)顔となる顧客が既におり(or見込みがあり)、3)会社として日本にBETする意思決定がなされている、以外は希少かもしれない。
*boxの対グローバルでの売り上げ比率21%(2024年時点)やNotionの早期からのGTM等々のデータを後で集める。
*当時Googleが米国外初の拠点で日本をつくったファクトを集める。
2)GTMを行う上でつまずくポイント
*外資系企業の撤退のデータがあるか調べる。
コントロール不可な要因を除いて、日本のB2B SaaSにおいてつまづくポイントは幾つか共通点がある。詳しくはそれぞれの章でカバーしていく。
・持続的可能な組織をつくれるか
それぞれのGTMのフェーズにおいて組織にフィットする人材を採用したいタイミングで採用できるか、である。英語・カルチャー・経験・実績…それぞれのフェーズにフィットする人材の総数が限られるため、日本での採用についてはどこのSaaS企業も苦労しているかと思う。更に採用したとしても、初期のフェーズはじめそれぞれのフェーズで採用した方々が企業の成長に合わせて変化しながら継続的にパフォームできるか、また本人も熱意をもって働き続けてくれるか… もっともっと苦労する所である。
*英語話者の統計データを調べる。確か人口の3-4%だったはず。
・エンタープライズプロダクトフィットできるか
プロダクトがフィットして日本のマーケットにてGTMを行おうとしても、日本のエンタープライズ企業のそれぞれの要件にフィットせず、またフィードバックを頂いてもグローバルレベルで改善せず(できず)、失注したり、解約となったりする事がある。セキュリティ&コンプライアンス、アドミンやアナリティクス、プライシング、契約・請求のベースとなる要件… 色々とあるが、継続的に改善しないとトップラインを伸ばす契機を逃していき、最終的に伸ばせないまま終わる事となる。
・競合との差別化ができるか
同業界には他の外資系企業が参入しているケースもあれば、日本の企業が先にGTMを展開しているケースもある。GTMのアセスメントの時点で競合分析についてはマーケットイン手前にて行なっている形となるが、既にマーケットがある場合は競合からのリプレイスメントがはじめのARRをつくるベースの1つとなる。基本中の基本ではあるが、明確な差別化がないまま参入するといつまでたっても受注ができなかったり、受注するまでにたくさんの骨折りをしながらセールスサイクルの長い、生産性の低い受注になる可能性がある。
・日本の顧客に合わせてローカリゼーションできるか
エンタープライズプロダクトフィットもそうだが、マーケットとの一連のコミュニケーションが日本語を中心とした仕組みが整えられるか、である。PRのメッセージングは日本にフィットしているか、ウェブサイトには日本の顧客がずらっと並んでいるか若しくは並べられるか、セールスサイクルは基本日本語で対応できるか、サポートは日本語で日本時間で対応できるか、一連のドキュメントは日本語か、支払いは日本円か… 色々あり、すぐには解決するのが難しいかもしれないが、継続的に改善できるかは大事なポイントとなる。
・改善のプロセス・オペレーションがあるか
マーケットインしてからはとにかく顧客の声に耳を傾け、どうすると満足するのか・どのように改善できるのか・どのようにSaaSを通じて目的が達成されるのか、コミュニケーションが大事となる。一方で、いろんな声が本社に届かぬまま何も進まないという事になると、上記の他のポイントと相まって、時間の経過とともに顧客が離れていく事も十分にありうる = 会社としての信頼も失われていく。T2D3まで行かずとも、一気にスケールをさせていくフェーズのため、顧客の声をどんどん集めて優先順位やJustification(正当性)を評価し、本社と交渉しながら継続的に改善を進めていく必要がある。
だいたいの撤退若しくは苦戦しているSaaS企業はこれらのポイントがお互い相まって苦戦しているかと思う。
3)限られた具材で美味しい焼きそばをつくる
マーケットインした際は、製品はあっても何も日本にオペレーションがない所から始まるので、”さて、どうするか…”から始まる。人・モノ・カネ、全てにおいて不足している中で、なんとか日本ビジネスを軌道に乗せなければならない状況をよく焼きそばづくりに例える事がある。充実している組織であれば、大型の冷蔵庫の中を開けるとビッシリと野菜と肉と麺があって、キッチンの脇のマニュアルを読むと誰でも美味しい焼きそばがつくれ、すぐに食べられる状態。一方でマーケットインした組織は小さな冷蔵庫の中に麺とソースしかなく、隣の家に野菜をもらったり財布の中のなけなしのお金を使ってスーパーで野菜と肉を買い、更にマニュアルもないため見よう見まねで美味しい焼きそばをつくる(そして美味しい時もあれば、美味しくない時もあれば…)それくらい軌道に乗せるためにボロボロになりながら前進するのがGTMのはじめである。
4)一連の内容にてカバーする・しない範囲
・B2B SaaS
・Scale-upのフェーズ
・新しく日本マーケットに参入
の中で最低限必要なエッセンスを取りまとめた内容にしていく。よって基本書となるので、もうGTMのいろはについてプロフェッショナルな人達には向かない内容となる。
(約2,900字)