
GTMの体系化 – その7 セールスオペレーションのインフラを整える
写真は、出張の合間に友人に会いにマンハイムに行った時のモスクの天井の写真。異なる宗教の人たちも多く、街中は少し雰囲気が異なるのと、実際マンハイムの小学校で働いている友人は、更に社会情勢もあってロシア・ウクライナからの移民も増えてきており、ピュアなドイツ人はクラスの2-30%程度と言っていた。
・あくまでも今は雑記なため、頭で描いたものをザザザっと記載
・自分の経験はフリーミアムなPLGからSLGへの成長が主な経験のため、Pure B2Bとは差異がある可能性あり
・日本のSaaS GTMに初めて触れる人達向けを想定(特に外資系での日本参入)
・(無いとは思いますが…)無断での転載、複製、改変等は禁止です
*トップラインを伸ばすために必要なポイントだけに絞る。
*Sales Opsの定義や範囲も明確にする。
初期のフェーズではグローバルでまだまだインフラが整ってない事もあるため、皆で色々なルールやオペレーションをつくっていく事となる。たいていは本社で整えていく事があるが、小規模のスケールアップになると皆でつくっていく事となる。幾つかのポイントを共有したい。
・ルールの定義:Rule of Engagement(RoE)
目的はGTM戦略に沿ったルール・オペレーションを敷いて効率的な活動をする事で、セグメント、テリトリー等の言葉の定義からはじまりアカウントオーナー、商談オーナー、スプリットルールなど営業活動の中で生まれる線引きを行ったドキュメント。初期のフェーズでは(トップラインを伸ばす事に集中すべく)まずはグローバルのドキュメントに沿って日本のセグメント、テリトリーをデザインしていく。またグローバル全体の成長とオペレーションの標準化に伴って、各地域に沿ったRegional Rule of Engagementを定義していく事となる。日本のマーケットにフィットさせていく上で、幾つかのポイントがある。
*もっともっと基本を書いていった方が良いかも(セグメンテーション、テリトリー、アカウントマネージメント等)
1)グループ全体を1人で見るか、役割分担するか
日本の場合はホールディングスの配下に多数の事業会社を束ねるケースが多数あるが、Holdingsは誰が見るか、またSales1人で見るか、である。 Holdingsの役員に集中する、1事業会社の導入からエンタープライズで攻めて売上をつくる、等々目的に応じてとなるが、この線引きにより、セグメンテーションに大きな差異が出る。
2)グループ全体の従業員でカウントするか、単体でカウントするか
1)に関連して、グループ全体でカウントするとなるとセグメンテーションの境界線次第となるが、例えば2,000名や5,000名でエンタープライズを区切ると、大部分がエンタープライズのアカウントとなる。1)と2)の組み合わせとなるが、今いる若しくはこれから採用するエンタープライズのSalesの人数に対してどれくらいのアカウントがあるか、優先順位をつけたとしても皆でカバーできるか(リソースの大部分をかけるとなるとエンタープライズは1グループ/Salesでもだいぶ大きな稼働がかかってくる)がポイントとなる。
3)インダストリーでテリトリーをカットするか
エンタープライズにおいてよくあるのがインダストリーそれぞれで担当を分けて対応するケースである。インダストリー毎にマーケットの成熟が異なるため、Expand(成熟へ向かっているマーケット)vs new(これから伸びるマーケット)でそれぞれ役割も異なってくる。初期のフェーズにおいては、まだICPで定めたインダストリーに対して注げるリソースも限られてくるかもしれない。よって、場合によりICPに定めたインダストリーに徹底集中するために、皆で特定のインダストリーを分割して集中的に活動するケースもある。
4)PubSec/Eduをどうするか
中央省庁から独立行政法人、また国立大学法人から各学園、マーケットが特殊が故に通常のルールではフィットしないケースもある。初期のフェーズでは、PubSec/EduのVertical SaaSでない限りは、リソースを集中させるマーケットにはしないし、パートナーモデルや後述するISMAPがない限りはマーケットインも限定的となる。異なる世界になるため理想はインフラが整い次第、組織として別につくっていくのが理想的だが、当面はリアクティブながら、啓蒙活動しながら来たる日のためにあっためていく事となる。まずはRegion・日本としていつ何を目的にBETしていくかが肝となる。
5)Splitをどうするか
複数のSalesが関与して受注できた商談をどう評価として分割するか、である。特に日本の場合は集中購買にて本社で全てオペレーション含めて一括で購入するケースもあり、現地のアカウントチームが動かなくとも本社側でどんどん進められるケースもある。AMERやEMEAにおいて逆のケースも然りだが、グローバル全体で然るべき人に然るべき形でちゃんと報酬がバックされる仕組みを整える必要がある。
・基本データのインフラ整備
日本のマーケットにおけるアカウントのデータセットは、以降に様々な分析を行う上で大事なポイントとなる。日本においては帝国データバンク、東京商工リサーチ、ユーソナーといった日本のマーケットのデータを保有している企業も幾つかあり、CRMへデータを流し込んでいく。グローバルではClearbit, Cognism, Zoominfo等々もデータを提供しているが、RoEに合わせられるデータの粒度やデータの正確性を踏まえると、日本のベンダーから購入するという選択肢一択となる。企業名、企業住所、親会社名、トップの親会社名、従業員規模、など基本情報が必須となるが、製品やRoEに合わせて、親会社との関係は連結か関連か、様々なテーマ毎のフィルタリングを持ち合わせているか、またデータから更に他の仕組みへの拡張性(スコアリング等々)まで検討しながら選定すると尚良い。
*もっと書けるコンテンツのため、ポイントを絞ってさらに掘り下げる。(トップラインに関係する所で)
・クロージングPlaybook
どういう定義でどうプロセスをなすのか、明確にしたドキュメント。Bookingとは、RevRec(Revenue Recognition)とは、Bookingの際に必要なものとは?その後どの様にRevRecされて, Commissionとして反映されていくのか?そのサイクルは?と実際に受注してからどの様に辿っていくのか、透明性と認識合わせにてあると良いドキュメントとなる。SalesはCommissionの比率が40%や50%と高く且つお金に関わるセンシティブなトピックなので、しっかりと整えていきたいところ。
・アカウントの優先順位
前述のICPに合わせた企業群に対して、更に各Salesが1年かけて大きく獲る企業を選定した際のCRM上でのTiering付けである。Tier1に例えば3社選定した際は、Salesの人数×3社 = 日本で最優先で獲得しにいくアカウントのため、Tierとアカウントプランを元にマーケティングやSDR/BDR等の各部署と連携しやすくなる背景がある。ここではTieringのインフラを整える観点のみの言及とするが、Tier1から3若しくは4まで整えて、どこに注力するかがセットされている状態、またもし攻略が難しいアカウントがあった際は、定期的に入れ替えるオペレーションがあると良い。もしどの企業を選定するか悩ましい際は、ICPに立ち帰り、
・インダストリー
・従業員規模
・競合製品利用状況
・エグゼクティブとのエンゲージメント
・(フリーミアムの際は)無料版利用状況
・ペネトレーション(現在の利用規模 vs アカウント全体にて活用されたW2Wの利用希望)
・他の可能性を左右するトリガー
等を参考にしながら、蓋を開けたら何も商談すら生まれなかった等無駄なリソースにならないように慎重に選定する。
・プライシングの準備
ここでのプライシングは普段の導入というよりかは、ファーストカスタマーを獲りにいくためのプライシングである。初期の頃の顧客がその後何年も一緒に歩む顧客になるため、大事なポイントとなる。もしユーザー単位のプライシングであれば、何ユーザーの場合、どれ位のAdjustment(価格調整)を行うか、その場合顧客と何をトレーディング するか、特にはじめの5社や10社等、ルールを設けてグローバルで大幅に価格調整を行う機会がある。一方で、特に日本のマーケットにおいて事例が好まれる中で、初期の頃は事例が非常に乏しい故に、一緒に成功事例をつくり世の中に継続的に発信できるような顧客とのスクラムの組み方がよくある。
更に上記の様なケースに対する承認のプロセスも仕組化していきたい。色々とインフラが整っていない中で、誰に対してどこまでのJustification(なぜ必要か?)を元にどうやって承認をとるのか。CEO・CFO・CROがもしいれば、事前に承認をとっておくか案件ベースで常にコミュニケーションできる状態でありたい。
*後でエンタープライズのトピックに移す
*テクノロジーのデザインはそこまで需要はないかもだが、コンテンツのボリュームやバランスに応じて記載する
・セールスからの相談プロセス
前述のホットな商談が出てきた際に、円滑に本社とコミュニケーションを取りながら、前進する必要が出てくる。故に、円滑にやり取りを行うためのインフラをグローバルレベルで整えていく必要がある。
1)Legal
おそらくTerms of Service(利用規約)から外れた条件を締結する必要が出てくるため、密にコミュニケーションをとるケースの1つとなる。例えば、契約期間、提供価格・通貨・範囲(どこの国が適用となるか)、支払い締め条件、それ以外に上記の事例等マーケティング活動への協力、、、日本にCommercial系のリーガルを採用するには体力が必要故に、本社とのやりとりをブリッジしながら日本語・英語で解決へ進めていく。
2)Finance
請求書・支払い関連でやり取りする必要が出てくる。日本の場合は月末締め、翌月末払いのケースも往々にしてあり、SaaSでよくあるN+30の条件がフィットしないケースや、また海外送金を行うのに複雑なプロセスを踏まなければならない(そもそも日本の銀行口座を好む前提で)ケースにてやり取りが生まれる可能性がある。更に、契約後の請求書にて数字の細かい問い合わせもファイナンスを担当してくれるサポートチームと切り分けを明確にしながら、進めていく事もある。細かい問い合わせが多発しやすい。
3)Solution Consultant
初期の頃は製品がまだエンタープライズフィットに向けて途中段階であり、まだ製品に対してのソリューションセリング・バリューセリングをするまで成熟していないが故に、製品Q&Aが中心になるかもしれない。セールス・カスタマーサクセスとも連携しながら、製品GAPがある際は本社とのブリッジをしながら、優先順位の高い商談に影響のある機能群に対して実装をするようリクエストをし、商談のボトルネックを解消しながら前に進めていく。
4)Customer Success
初期の頃はカスタマーのサクセスジャーニーの定義に向けた途中段階であり、まだいつどんな状態になっているのが”サクセス”か?が描ききれていないステージのため、顧客とスクラムを組みながら、ガイドをしながら、顧客の元々の導入目的・期待値を達成するために前に進めていく。特に上記のトップ顧客に対しては、モデルになって頂けるよう、(商談の時点で色々と成長段階のため一緒に試行錯誤していく合意があると良い)リソースを集中させていく。
5)Deal Desk
初期の頃はもしかしたら不在かもしれないが、通常の商談から逸する商談に対して相談する窓口があるとスムーズである。基本はDeal Deskにて条件について管理しており、時に上記のLegalやFinanceともブリッジしながら条件を固めていく。顧客との商談にはスピードが求められてくるため、Deal Deskと密にやり取りしながら、(時に時差もありながらも)提案に向けて一緒に準備をしていく仲間となる。
・コンププランの定義
Salesの各メンバーは指定の期間毎に目標設定がされており、その目標に応じて報酬をコミッションとして受け取る事となる。前述の通り60%がベース、40%がコミッション前後が標準となるが、自身のパフォーマンスが正しく計算されて正しく支払われる事は、Salesの各メンバーのモチベーションのベースとなる。会社としてのペイアウト(コスト)と報酬のバランスを取りながらグロースさせるべく、通常の達成以外にも幾つかの条件に従って、更に支払いを上乗せするケースもよくある。
1)Acceleration
SalesがXXX%以上の達成を行なった場合に、支払額が150%や200%になる様なプログラム。トップラインが更に伸びる様、達成者には更に報酬を支払うが、コストとのバランスから天井を設定するケースも多い(例: 200%・250%達成まで)
2)長期契約
Salesが3年契約を結び、且つユーザー数が毎年10,000ユーザー単位で増える場合、増分のARRのX%を報酬とする様なプログラム。トップラインを伸ばす点も勿論だが、長期契約を通じて顧客のチャーンを事前に防ぎ、安定的なARRを見込む事も目的となる。
3)新製品・新プランSPIFF
もし製品がローンチしたばかりであったり、テコ入れしたり、更に導入ペースを上げるためであったり、いずれにしてもブーストさせたい際に、ACV/ARRに対して例えばXXX%の掛け算でコミッションを計算する等のSPIFF。一気にユーザー数をばら撒きたい際に、有効な手段。
4)ロゴSPIFF
顧客事例化等コンテンツの充実化をブーストするために、契約書での文言追加をベースに一定額やXXX%の掛け算でコミッションを計算する等のSPIFF。初期の頃にはグローバルでメジャーロゴの獲得が1つのチャレンジとなるため、どんどん推進できると良いSPIFFである。ICPにフィットした国毎、インダストリー毎、ロール毎、役職毎、様々なロゴとユースケースが欲しいところ。
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